小松基地に訓練部隊を移転 航空自衛隊新田原基地から
防衛省が検討、来年にも F15戦闘機10機を追加配備
2015年08月05日(水) 北国新聞朝刊一面記事より引用
防衛省が来年にも、航空自衛隊小松基地に新田原(にゅうたばる)基地(宮崎県)の訓練部隊である飛行教導群を移し、
F15戦闘機約10機を追加配備する計画を検討していることが4日、関係者への取材で分かった。空自で日本海側唯一の
防衛拠点である小松基地に精鋭の訓練部隊を備え、パイロットの飛行能力を強化する。防衛省は石川県や周辺自治体に
説明を始めており、2016年度の政府予算概算要求に移転に関する費用を計上する方針だ。
部隊の移転は13年12月に閣議決定された防衛計画大綱を受けた措置となる。周辺空域で中国やロシア軍機の活動が
盛んになる中、大綱には空自の能力を向上させるため「訓練、演習の充実、強化に努める」と記されており、訓練空域が広
い小松基地が候補地に選ばれた。
飛行教導群はパイロットの空中戦闘能力を高めるため、1981(昭和56)年に発足した。「アグレッサー(仮想敵)部隊」と
も呼ばれ、現在は新田原基地に所属する。
隊員は総飛行時間が2千〜3千時間を超えるベテランで、特殊な迷彩塗装を施したF15を操って敵機役を務め、若手の
パイロットに実戦に即した戦い方を指導する。
小松基地には緊急発進(スクランブル)に対応するF15が約40機配備されているが、訓練部隊の移転により、約50機に
増える見通しだ。
これに伴い、小松基地にはパイロットや整備士ら150人超が新たに配属される。防衛省は増員に備え、小松市向本折町
に隊員宿舎を新設する計画で、16年度政府予算の概算要求に建設費などを盛り込む。
近畿中部防衛局は近く、地元住民らでつくる小松飛行場周辺整備協議会などに説明し、部隊移転への理解を求める方
針である。
「対中シフト」の強化急ぐ
防衛省が航空自衛隊新田原基地の訓練部隊を小松基地に移す検討を始めたのは、日本周辺で空軍力を強化する中
国、ロシアに対抗できる高い能力を小松基地に求めた結果といえる。
小松沖の「G空域」は国内に13ある空自の訓練空域の中で最も広く、F15の性能を最大限に引き出した、さまざまな訓
練が可能という。特に小松基地には、操縦技術に優れたパイロットが優先的に配属されており、他国の戦闘機の特徴や技
術を徹底的にまねた訓練部隊と、より高度な演習を行うことで戦闘技術の向上を図る狙いがある。
防衛省によると、2014年度の外国機に対するスクランブルは943回で、米ソ冷戦期に記録した最多回数に次ぐ。動き
を活発化させる中国軍の存在が、数字を押し上げたとみられる。
防衛省は来年にも部隊の移転を完了させる方針だが、住民の負担増を懸念する声が出る可能性もあり、周辺自治体や
地元に対する十分な説明が求められそうだ。
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